卓球全日本選手権若い力が躍動!

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卓球で最年少記録の更新

全日本選手権では、いずれも最年少記録を塗り替える伊藤美誠と張本智和は、なぜ圧倒的に強いのか? 卓球の専門家はこう分析しています。

全日本卓球を制した伊藤美誠と張本智和

1月15日から21日にかけて東京体育館で開催された全日本卓球選手権大会(以下、全日本卓球)は、衝撃的な結末を迎えた。女子シングルスでは17歳の伊藤美誠が初優勝したほか、女子ダブルス、混合ダブルスと合わせて3冠を達成。そして男子シングルスでは14歳の張本智和が史上最年少で初優勝を飾った。若き才能の芽が息吹いた背景には何があるのか。卓球専門ライターの伊藤条太氏に解説をお願いした。

決勝では平野美宇をセットカウント4-1で破る
世界で勝つために設計された伊藤の独創的なスタイル
世代交代をつげるかのような衝撃的な結果となった全日本卓球。その象徴となった、史上最年少で3冠を達成した伊藤美誠と、史上最年少で男子シングルスを制した張本智和のプレーについて、多少専門的に解説してみたい。

二人の活躍の背景に、3年前に導入されたプラスチック製ボールの影響があるという話も聞くが、筆者はその影響はほとんどないと見る。ボールの違いといっても、過去にあった38ミリから40ミリへの5%ものボールの直径の変更(2000年)や、日本で2001年まで通常の卓球と並行して行われていた「軟式卓球」に比べれば、微々たる違いでしかない。それらにおいてさえも、選手間の実力の逆転や特定のスタイルの選手の活躍は見られなかったのだ。厳密には多少の影響はあるかもしれないが、ボールのプラスチック化を二人の活躍の主要因とするほどの決定的な原理は見当たらない。

ボールの違いよりも明らかなのはプレーの進化!

伊藤のプレーで何よりも驚かされたのは、バックハンドドライブの回転量だ。女子シングルス準決勝で対戦した石川佳純も決勝で対戦した平野美宇も、抑えきれずにオーバーミスをする場面が何度も繰り返された。

卓球は、相手のボールにどれほど強い回転がかかっていても、ラケットの角度さえ合わせれば返すことができ、それ自体に筋力は要らない。だから女子小学生でも成年男子のボールを返しうる。

にもかかわらず石川と平野が伊藤のバックハンドドライブにオーバーミスを繰り返したのは、その回転量が彼女らの経験を上回る量であり、ラケット角度の馴れの範囲を超えていたからだ。

卓球のように速いスポーツの場合、動きの多くは条件反射でなされるため、意識で変えられる部分は意外に少ない。頭でわかっていても、反応が組み込まれていない角度は瞬時に出せないのだ。

まだ17歳の伊藤が、中国選手とも対戦経験が豊富な石川や平野が返せないほどの回転量のドライブを打つこと自体驚くべきことだが、さらに驚くのは、伊藤はそれを「表ソフト」という回転のかけにくいラバーで実行していることだ。このラバーは、突起が表面に出ているタイプで、主流のラバーである「裏ソフト」よりもはるかに回転がかかりにくい(「表」とつく理由は、卓球界にこちらのラバーが先に登場し、後に日本選手が裏返すことを発明したという歴史的経緯による)。

なぜ回転がかかりにくいラバーを使っているのか?

なぜわざわざ回転がかかりにくいラバーを使っているかと言えば、回転が少ないボールの希少価値によるやりにくさと、回転がかかりにくい分だけ相手の回転に鈍感なため、回転の読みにくいサービスを返しやすいメリットがあるからだ。

伊藤がレシーブのときにフォア側のボールまで動いてバックハンドで打つのはそのためだ。つまり伊藤は、回転のかかりにくいラバーのメリットを享受しつつ、回転をかけたいときには自らのスイングスピードで猛烈にかけるという、強引ともいえる力技の戦略を取っているのだ。

伊藤の異常さはそれだけではない。伊藤はフォア面には回転がかかる「裏ソフト」ラバーを使っている。当然、ボールに前進回転をかける「ドライブ」を中心にするのが定石だが、伊藤は逆に、回転をかけずにスピードを優先する「スマッシュ」やいわゆる「美誠パンチ」を連発するのだ。

つまり伊藤は、回転がかかりにくいラバーで回転をかけ、回転をかけやすいラバーで回転をかけないという、いわば「逆位相」とも言える卓球をしているのだ。このようなスタイルの選手は、知る限り現在も過去も世界のどこにも存在していない。卓球界でも極小の部類に属する伊藤の体格で、世界で勝つために設計された極めて独創的なスタイルと言える。

旧来の卓球を変える可能性のある張本のスタイル

一方の張本の卓球の凄さは、ひとことで言えば、女子のピッチの速さと男子のパワーの融合である。

卓球の試合を見ていると、一般的に女子選手は台の近くでプレーをし、男子選手は台から離れてプレーをするのがわかるだろう。これは体格と筋力の性差による。

トップレベルの卓球においては、勝敗を決するのは人間の反応時間を突き破るボールだ。ラケットの角度や巧妙さには限界がないが、反応時間だけはどれほど鍛えてもそれ以上は縮められない生物学的な限界があるからだ。

女子選手の場合は、台から離れるとどれほど強く打っても相手の反応時間を突き破るボールを打つ筋力がないので、台に近づいて早いタイミングで打つことでそれを実現しようとする。

一方で男子選手は、遠くから打っても十分に速いボールを打つことができるので、自分の時間を確保しつつ大きなフォームで強打を放つことを選択する。これが男女の台からの距離の差となっている。

通常、台に近ければ自分の持ち時間も少なくなるので、スイングは小さくなり、ボールの速さは一定限界内のものとなる。これが一般的な女子選手の卓球だ。

ところが張本は、女子選手のように台の近くに陣取りながら(卓球ではこれを「前陣」という)、その位置ではありえないほど大きく体を使い、強烈なボールを放つ。

それがわかりやすいのはフォアハンドのフォームで、両足を肩幅の2倍以上にまで広げ、打球前に相手に背中が見えるほど上体を捻って、一気に180度も捻り返す。ラケットの旋回角度は実に270度にも達する特大サイズのスイングだ。

十分な時間があれば誰でもこのようなスイングができるが、張本はそれを時間がないはずの至近距離でやってのける。結果、一般の男子選手より絶対的に速いボールというわけではないが「その距離から打つボール」としては十分すぎる殺傷力を持つ。

それを実現しているのは、驚異的な判断の速さと身のこなしの速さだ。それはあたかも張本のまわりだけプランク時間(※物理学で定義された時間の最小単位)が異なる「張本時間」が流れているかのようだ。

張本のバックハンドは、打法そのものよりも、相手が決め球を打ってこようが逆をつかれようが体勢が崩れようがお構いなしに、マシンガンのように打ち続ける発想の方に特徴を持つ

他の選手なら、当てるだけにして一度守りに入るか、十分な体勢で打つために台から離れて時間を確保する場面があるものだが、張本にはその発想自体がない。そこには、何が何でも前陣を死守したまま強打を放ち続けようという強い意志と、それに支えられた徹底的な訓練が感じられる

昨年12月に仙台で行われた世界選手権最終選考会のとき、試合前の練習時間に、一般の男子選手が台から離れて豪快なボールを打ち合っていたのに対して、台にピッタリとついて性急ともいえる連続強打をひたすら繰り返す張本の姿は異端であり異様でさえあった。

ひとりが新しいスタイルで成功すると、あっという間に追従する選手が現れるのがスポーツの常だ。成功例はひとつでよい。可能性が示されれば十分なのだ。その可能性に賭けて多くの才能と時間が費やされ、やがてそれがスタンダードとなってゆく。これがスポーツの進化のプロセスだ。

伊藤の卓球はあまりに斬新であるため追従者は限られるだろうが、張本の「パワー前陣卓球」は、ある意味正攻法であるため、多くの追従者が出るだろう。それは、旧来の卓球をその選手とともに過去のものとしてしまうかもしれない。

生物の進化は目撃することはできないが、卓球の進化は今、目の前で起こっている。なんとドラマチックなことだろう。

 

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