空自F35墜落の原因、空間識失調ってなに?

空自F35墜落の原因、空間識失調ってなに?

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防衛省が三沢基地所属のF35墜落の原因をパイロットの空間識失調が原因と発表!

4月9日に青森県沖で夜間に発生した航空自衛隊のF-35A戦闘機の墜落事故について、6月10日に防衛省から中間報告が出ました。飛行記録の入ったブラックボックスは回収できなかったものの、F-35には編隊間で情報共有を行う多機能先進データリンク「MADL」が搭載されており、これと地上基地レーダーの情報と合わせて事故原因を絞り込んでいます。

F22

6月10日の空自による事故報告では、「機体に問題はなく、操縦者が空間識失調に陥った可能性が高い」とされました。パイロットが亡くなったこともあり断定はできませんが、交信記録や墜落機の航跡などからそう推定されました。

音速で海面へ急降下!事故の概要とは?

4月9日午後7時26分ごろ、空自三沢基地(青森県)から東へ飛んだF35Aがほか3機と太平洋上で訓練中、無関係の米軍航空機と距離を取るよう地上管制機関から降下指示を受けました。「はい。了解」とパイロットが応じた後、高度約9600mから急降下が始まり、30秒ほどで海面に激突しました。

速さは音速なみの毎時約1200kmに達したとみられます。F35Aの機能上は出ますが、この速さでしかも急角度での「通常はありえない降下」(戦闘機パイロット経験者)。一方で海面が迫ってもこのF35Aには態勢回復や緊急脱出の跡がなく、パイロットは落ち着いた声で交信していました。

今回の事故では事故機のパイロットと交信が可能な状態でありながら異常を伝える報告が一切無いまま海面に墜落しています。
多機能先進データリンク「MADL」にも不具合を示す情報は記録されておらず、そして墜落しそうになっているのに機体の回復操作を全くしていないとなると、事故原因の可能性はパイロットの意識が失われたか(低酸素状態ないしG-LOC)、意識があっても墜落の脅威を感じていなかったか(空間識失調)に絞られます。

主な航空事故の理由から考えてみる

機体の故障以外では次の3つの原因で航空事故が起こっていることが多いです。

1. 低酸素状態(酸欠で意識低下)

高い高度を飛行する航空機に見られる原因です。
低酸素状態について報告書では「全く考えられず」と真っ先に除外されています。
普段民間の旅客機などでは、与圧システムという、操縦席や客室の気圧を上げる装置が付いているため、低酸素症になりませんが、システムの異常や、機体に傷が入ったりすると減圧が起き低酸素症になります。
低酸素症にならないためには酸素を吸う必要があります。そのため、旅客機などで酸素マスクが落ちてくるのはこのためです。
戦闘機では、銃弾が飛んできて急に気圧が下がることによるパイロットへのダメージを防ぐため、与圧システムを必要最小限にして、酸素をマスクで吸っています。
低酸素症は、溺れるように急に息苦しくなるような症状ではなく、チョット体がだるいとか、頭がいたいなどのちょっとした症状しか出ないため、気がついたら意識を失っている怖いものです。また、思考能力が低下するなどの症状が出ます。

低酸素訓練の様子、産経新聞より

もしも低酸素状態だった場合は酸素供給装置の欠陥が疑われますが、墜落直前の交信では意識が朦朧としている様子はなく、交信時の飛行高度は酸素マスク無しでも呼吸できる高度15500フィート(4700メートル)であり、墜落まで高度は下がり続けています。
急激に低酸素症が進むと言われる30000フィート(約9000m)でも意識を失うのに約2分程度かかると見られるため、状況的に可能性としてはゼロであると判断されています。

2. G-LOC(高い重力による失神)

急激な旋回などで高い遠心力がかかり、失神してしまうものです。
これは、飛行機の頭から足に向けて重力のようにかかる遠心力の影響で通常脳に送られるはずの血液が、不足してしまうために起こります。
症状としては、貧血のように景色が暗くなり、やがて意識を失ってしまいます。
戦闘機の場合最大普段の9倍ほどの力がかかります。このため、パイロットは、耐Gスーツを着て、高いGがかかった時に脚を圧迫して、なるべく血液が下に下がらないようにしています。
今回は、旋回終了後に交信しているため、可能性はひくいとおもいます。
G-LOCについては「可能性は極めて低い」としつつ念のために対策を行うとされています。左旋回終了後に交信が行われており、旋回中に高Gで失神しなかったのに旋回終了後に暫くしてから突然失神という可能性は考えにくいです。
機体の機器が高Gで異常をきたした可能性についても、機体に異常が起きたならそれに応じた機動がある筈なのに全く無く、異常の報告も無く、射出座席も作動しておらず、状況的に考えにくいとされています。

3.空間識失調(平衡感覚の喪失)

空間識失調が事故原因として「可能性が高い」と結論されています。低酸素状態とG-LOCが否定された以上、残る可能性はこれくらいしかありません。
空間識失調はバーティゴ(vertigo)とも言います。
人間の平衡感覚が狂い、ひどい症状になると、地面が上にあるのか下にあるのか分からなくなってしまう症状がおきます。
空間識失調は健康な状態でも、ベテランパイロットであろうとも時として陥ってしまうもので、激しい戦闘機動訓練を行う戦闘機ではG-LOCと共に事故原因として多く挙げらてれます。

そもそも空間識失調って何?

空間識失調の意味

ニュースではさらっと「平衡感覚を失った状態」と説明されることもありますが、そもそも平衡感覚がなくなるってよくわかりませんよね、実はこれがかなり厄介なものなのです。

航空医学の言葉で、パイロットが飛行中に視覚や聴覚などに異常をきたし、自機の姿勢や動き、地表との位置関係を実際と違う状態で思い込んでしまうことによく使われます。

これだけ聞くと具体的にどう危ないかわかりずらいですよね、例えばパイロットは水平に飛行していると思っていても実際は上下が逆さまになり地上に向かって降下してることもあります。
当然そんな状況から抜け出せないまま飛び続ければ、致命的な事故へとどんどん近づきます。

空間識失調ってどうやって起こるの?

視覚で周囲を確認しやすい昼間の晴天時よりも夜間や悪天候時に起こりやすいとされています。
みなさんも、目をつぶって片足で立つなどしたらわかると思うのですが、視覚が平衡感覚に与える影響は非常に大きく、周りの状況がわからない夜間や雲の中は特に起こりやすいといえます。
最近の自衛隊や民間のヘリコプターの墜落にも夜間や悪天候による空間識失調が原因とみられるものもあります。
空間識失調は決まった航路で旅客を安全に運ぶ民航機よりも、有事に備える戦闘機のような動きの激しい航空機で起こりがちです。
先程、平衡感覚に視覚が与える影響が大きいと言いましたが、目をつぶってジェットコースターに乗っているとおそらく今どこが地面なのかわからなくなると思います。
同じように視界が悪い時に戦闘機が空中戦などをやっていると起こりやすいわけが何となくわかると思います。

空間識失調ってどんな感じ

空間識失調は2パターンの症状があると思います。それは、本人が空間識失調に入っていることを気づいているかどうかです。

空間識失調にかない場合

例えば背面飛行で1Gの重力がかかるような放物線を描くように降下している飛行をしていた場合にはパイロットは地上にいる時と同じ重力の感じ方をするため、周りの景色や計器を見ないと自分が逆さまになっていることに気づけません。
何も交信せずに墜落していく場合はこのパターンが多いです。

空間識失調に気づいた場合

空間識失調に気づいた場合でもまだまだ油断はできません。例えば実際は30度右に傾いて飛んでいたのに、水平に飛んでいると思っていたパイロットが空間識失調に気づいて、水平に戻すとします。
しかし、実際に水平飛行に戻ってもパイロットは左に30度傾いた感覚が残るので知らず知らずにまた元の状態に戻ってしまうことがあります。
感覚としては、船から降りて地面は動いてないのにまだ揺れている感じが残るようなものです。

今後の自衛隊の対処は?

空自はパイロット教育で「空間識失調にならない人はいない」として、なった後の対処を重視します。

空間識失調がパイロットにつきものだとしても、そのたびに事故が起きてはたまりません。陥ったらいかに早く気づいて対処するか。とりわけ一瞬の判断の遅れが致命的になる戦闘機ではどうするのか。それが今回のF35Aの事故で問われました。

墜落は防げなかったか

たとえ空間識失調に陥っていたとしても、素早く気づいて対処すれば、墜落を防ぐか、脱出して一命を取り留めることができたのではないか。パイロットを責めるのではなく、再発防止のためにあえて考えます。

他の航空機同様、F35Aの操縦席でも「姿勢指示器」(AI)という計器で自機の傾きを確認できます。空間識失調が起きやすい夜間や悪天候での飛行では、この計器をより注視することが欠かせません。いわばパイロットの命綱です。

姿勢指示器
ボーイング787の姿勢指示器

ただ、先ほども述べたようにパイロットが機体に関する自身の感覚と姿勢指示器の表示のずれに気づいても、すぐ自分の感覚を修正するのは容易ではありません。
自分の感覚を信じて姿勢指示器の不調ではと思ったり、機械の影響を受けない方位磁針と見比べたり。夜間飛行で迷いながらも姿勢指示器に従い、雲の合間に街の灯が見えようやく迷いが晴れることもあるそうです。

空自によると 夜間の今回の事故当時に現場は晴れており、雲は少しあったそうです。月明かりが自機の姿勢を視覚で認識する助けになるそうですが、事故当夜の月齢は3.8でほっそりしており、どこまで役だったかは微妙です。また、時には海面の漁火を見て海と空を間違えてしまうこともあるそうです。

もしこのパイロットが「上下がひっくり返るような」(戦闘機パイロット経験者)重い空間識失調に突然陥って、水平飛行していると思い込みながら加速して急降下をしていたら。音速に近い勢いで海面に突っ込むまでの30秒ほどは、気づく手から対処するのにも難しい時間だったかもしれません。

全機種で訓練定例化へ

今回の事故では、飛行情報を詳しく記録したフライトデータレコーダーは見つかっておらず、亡くなったパイロットから事情も聞けません。
航空自衛隊は「空間識失調による事故である可能性が高い、それはF35Aに限らずどの航空機のパイロットにも起きうる」ということで、再発防止策を広くとることにしました。

空自にはパイロットを空間識失調に陥らせ、気づかせ、正常な飛行を保たせるための訓練装置が入間基地(埼玉県)の航空医学実験隊にあります。
この機会は同時に耐Gの訓練にも使われていて、これまではパイロットになる候補生の時に一度うけその後定期的に訓練をすることはありませんでした。
しかし今後は全機種のパイロットが定期的に受けるようにする方針です。

ただ、機種によって空間識失調の形は異なります。空自の次世代の主力戦闘機となるF35Aは、HMD(ヘルメットマウントディスプレイ)を採用していて、ヘルメットに直接いろんなデータや映像が映し出されるというこれまでの戦闘機とし違った景色を見ることになります。

領空侵犯を防ぐスクランブルを担う戦闘機F15、一昨年に空間識失調による高度誤認とみられる墜落事故が起きたヘリUH60J。日ごろの訓練でひやりとした経験を共有しつつ事故を防ぐ一層の努力が、全国各地の配備部隊で求められます。

「ミス」とは言わぬ覚悟

空間識失調によるとみられる事故を、空自では基本的にパイロットの「ミス」とは言いません。パイロット自身が飛行状況を正しく認識できる状態で適切な操縦がされなければ「ミス」として技量の未熟さが問われますが、誰でもなりうる空間識失調によって認識が狂うことは「ミス」ではないとしています。

とはいえ航空機が墜落すれば乗員はもちろん地上の住民の命も脅かしますし、F35Aなら一機百数十億円という国防の手段を失うことにもなります。姿勢指示器を確認すれば空間識失調に気づけるのであれば、気づかなかったり、気づいても対処できなかったりして甚大な被害を出す事故を起こせば、「ミス」と言われて仕方ないようにも思えます。

岩屋防衛大臣、衝突回避装置導入決定

これだけ厄介な空間識失調にたいして、岩屋防衛大臣は、アメリカで順次導入予定であるF35用の衝突回避装置の導入を指示しました。当初導入の予定がなかったものを早期導入に踏み切るみたいです。少しでも事故がなくなればいいですね。

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