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今日は、体操シリーズ「跳馬」について語りたいと思います。
「跳馬とは」
跳馬(ちょうば)は使用する体操器具名称と、それを使った種目の名称です。跳馬は演技者が実施を行い、審判が採点します。
いわゆる跳び箱です。
「跳馬の器具」
昔は、跳馬は、あん馬の把手を取ったような形の器具で競技が行われていたが、2001年から国際ルールでは形状が変わっています。
現在用いられているものは手前側が低く、あごが下がったような形状で、真上から見るとやや丸く見えます。
初めて見た時は、舌みたいだなーと思いました。
昔使われていたものは前述の通り形状が単純で、男子が助走方向に対して縦長に、女子は横長に置かれていました。男女間でルールの違いもあり、そのため男子と女子では発展した技にも違いがありましたが、跳馬そのものは高さと置く方向が違うだけで基本的には同じものでした。
過去、男女で跳馬の設置方向が違うため、男子では進行方向に対し体を横向きにして着手するツカハラ跳び・カサマツ跳びが早くから主流になったのに対し、女子では体を前後の向きにしたまま飛ぶ前転跳び・後転跳びが主流となりました。
しかし現在では男女で同じ形状のものが用いられているため、実施される技について男女間で大きな差異はなくなりつつあります。
男子・女子ともに行われる種目ですが、男女間で実施ルールに差異があります。跳馬は団体・個人総合で行われるほか、種目別でも単独で行われています。
「競技の方法」
跳馬は135cm(女子は125cm)の高さに設定され、その手前にロイター板(ジャンプ台)が置かれます。
演技者は助走を行い、跳馬の手前で踏み切りを行い、跳馬に手をついて跳ぶ。その後、いづれかの演技を行い、着地を行います。
跳馬の採点は踏み切ってから着地を完了するまでであり、助走中に一旦停止したり、躓いてバランスを崩してもそれ自体は減点対象となりません。
なお、技の構成には、踏切ってから跳馬に手を着くまでが「第1局面」、手をついてから着地までが、「第2局面」となっています。
なお女子における場合のみ、実施する技が実施前に電光掲示板にて掲示されます。
団体種目や個人総合では跳躍は1人につき1回ずつですが、種目別の跳馬決勝の場合は2度演技を行います。この場合、2回の跳躍はそれぞれ別系統かつ第二局面が違う技でなくてはなりません。
例えば、手をつく方向前転飛びにして、ひねる回数を変える。といのがこれにあたります。
同系統または第二局面が同じ技を2回行った場合、決定点に1.0の減点が科せられます。まったく同じ技を行った場合は0点となります。
「採点方法」
体操競技の他の種目は技の組み合わせに対して加点があるが、跳馬種目にはありません。そのため演技の価値点(Dスコア)と実施点(Eスコア)から得点がもとめられます。
実施点は10点からなりこれから演技の美しさ、突き放しの高さ、第二局面の高さ、着地により減点されます。
価値点は実施した技の難度であり技が認められた時点でここから減点されることはなく、難度が高いほど価値点が高くなります。
「技の種類」
数え切れないほど多くの技がありますが、系統立てると以下のようになる。
「切り返し技」
縦方向に回転しない技です。飛び箱の開脚跳びのような単純な技や、横方向のみの回転(ひねり)を加える技がこれにあたります。
難度が高い技では、伸身飛びに捻りを加えたものがあります。
「前転跳び」
踏み切って手を跳馬についたあと、そのまま前転し、宙返りして着地する技です。
みんなこの技から体操人生が始まると言っても過言ではない技です。または、前転跳びにさらに前方宙返りやひねりを加える技です。
「ツカハラ跳び」
側転とび1/4ひねり後方かかえ込み宙返りやその派生系で、踏み切りまでは前転跳びと同じであるが、踏み切ってから手をつく前(これを第一局面という)に体を1/4ひねり、横向きに着手する。その後さらに体を1/4ひねり後転を行います。跳馬上でロンダートしてそのままバク宙するような技である。初めて発表した塚原光男さん(ちなみに世界で初めてムーンサルトをしたのもこの方です。)の名が付けられています。
「カサマツ跳び」
側転とび3/4ひねり後方かかえ込み宙返りやその派生系で、踏み切りまでは前転跳びと同じであるが、第一局面で体を1/4ひねり、横向きに着手する。その後さらに体を3/4ひねり後転を行う。初めて発表した笠松茂さんの名が付けられている。前述のツカハラ跳びと並び、前向きに踏み切っておきながら後方宙返りを行う特徴的な技である。
「ロンダードからの後転跳び」
ユルチェンコ跳ともいわれます。跳馬に対して後ろ向きで踏み切り、後ろ向きに手をついてそのまま後転、宙返りして着地する技です。助走から後ろ向きで踏み切るため、踏み切る前にロンダートを行い転向します。
前転跳び同様、さらに後方宙返りしたり、ひねったりする技も含みます。実質的に前述の後転跳び、ツカハラ・カサマツ跳びと変わりません。
「その他」
第一局面で1回ひねりを加える技、半ひねりを加える技、ロンダートから半ひねりを行い前転跳びを行う技などさまざまなものがあり価値が上がります。
「過去にあった技」
ルールにより禁止になった技があり、マイ跳びという名前がついていました。
これは第一局面で前方宙返りを行う技ですが、現在のルールでは第一局面で認められている動作がひねりだけであるため、禁止されています。とても危険な技です。
側転側方宙返りのような横向きで着地する技も禁止されました。
禁止ではないですが、
片手着手の跳び方も価値が変わらないため、あまり見られなくなりました。森末慎二さんとかよくやっていたんですがねー。
「禁止行為」
次の場合は0点となります。
男女共通
・最初に足による着地が行われなかった場合
これは、身体のどの部分よりも先に、少なくとも片足が着地マットに触れなければならないことを意味しています。
・ロンダート技においてセフティ・カラーを使用しなかった場合
男子
・助走から、跳馬を跳ばずに走り抜けてしまった場合(跳躍板を踏んで跳馬に触っても触らなくても)
・助走を中断し、助走をやり直すために戻った場合
・技として判定できないような場合、あるいは跳馬を足で蹴った場合
・片手あるいは両手で2回以上着手した場合
・跳馬に着手することなく飛び越えた場合、または跳馬に触れても突き手がみられない場合
・故意に横向きで着地した場合
・禁止されている技を実施した場合(開脚技、第一局面での宙返り、踏み切り前にロンダート以外の技を行う)
・種目別予選または決勝で1回目と同じ技を2回目も行った場合
となっています。
足があわずに跳馬に胸を強打する通称「レントゲン」も0点です。
「男子におけるD審判の減点」
・片足または片手が着地エリアの外に触れる、または着地すると決定点 決定点から0.10
・両足、両手、片足と片手、身体の他の部分が着地エリアの外に触れる 決定点から0.30
・着地エリアの外に着地する 決定点から0.50
・25mを超す助走 決定点から0.50
男子におけるE審判の減点
・第一局面の実施欠点 0.10~0.50
・第一局面の技術欠点 0.10~0.50
・倒立位を垂直に通過しない 0.10~0.50
・第二局面の実施欠点 0.10~0.50
・第二局面の技術欠点 0.10~0.50
・高さ不足、上昇がみられない実施 0.10~0.50
・着地の準備としての身体のひらきがみられない実施 0.10~0.30
となっています。
「価値点(Dスコア)の決まり方」
価値点はそのまま技の難易度とほぼ直結します。
価値点を上げるためには回転数を増やす、ひねりを増やす、体を伸ばすなどがあります。
たとえばローチェ(前転跳び2回宙返り/3回宙)は価値点6.6ですが、これに半ひねりを加えたドラグレスク(前転跳び2回宙返り半ひねり)は7.0となります。
また、ツカハラ跳びの場合は価値点3.8ですが、屈身(腰は折ったままだが膝を伸ばす)の場合4.0、伸身で行うと4.6となります。これは、技を伸身で実施すると慣性モーメントが大きくなるため、角速度が小さくなり、同じ踏み切り力でも回転速度が落ちるため、宙返りをするのが難しくなるためです。
これは、体操競技全般に言えることです。
価値点上では同じでも、跳馬の雄大さを求める性格からか、捻り系の技よりも回転系の技の方が点数が出やすい傾向にある感じがします。
例えば、伸身カサマツ2回捻り(全体で3回捻る)と前述のドラグレスクではどうしてもドラグレスクの方が点数が出やすいような気がします。
跳馬が新しい形状になってからは着手する面積が広くなったことによって、ユルチェンコ跳び(ロンダードから後ろ向きに着手し、後方宙返り)などの着手の難しかった技がやり易くなり、相対的に価値点も下げられてしまいました。
「跳馬の見どころ」
やはり、一瞬にかける緊張感では、ないでしょうか。
跳馬は一番時間が短く、一番分かりやすい種目だと思います。
日本人で注目する選手は、やはり「白井健三」選手では、ないでしょうか?
その他にも内村航平選手や山室光史選手や最近では、なぞの新星安里選手などがあげられます。
白井選手といえばシライ・キムヒフンが有名ですね。
そんな中、最近世界でも珍しいリ・セグァンという技を成功させた安里選手が有名になってきました。
各選手の必殺技を見てみましょう。
「シライ・キムヒフン」
伸身ユルチェンコトビ三回ひねりです。難度では、F難度になります。価値点5.6となります。最近では、さらに半分ひねった「シライ2」が発表され、価値点6.0の世界最高峰の技となっています。
「リ・セグァン」
ツカハラ跳び後方1回宙返り1回ひねり
価値点が、6.0
北朝鮮のリ・セグァン選手が初めて実施しました。北朝鮮のことは、あまりいい印象がないかもしれないですが、この選手の跳馬は、すごいと思います。リ・セグァン3まで発表していて、まさに跳馬の鬼と言ってもいいでしょう。
この世界最高峰の技を決めるのは、大変難しく、やる人もいないため、大変珍しい技です。
「リ・シャオペン」
内村航平選手が実施している技です。
ロンダートひねり前転とび 前方伸身宙返り 2回半ひねり
価値点が5.8となっています。
この技、というよりは、内村航平選手のすごいところは、オールラウンダーなのに跳馬のスペシャリストの技をやってくることです。
クレイジーだとも言われるほどそのチャレンジ精神は、見習いたいものです。
新しい選手や、まだまだひねりそうな白井選手など、跳馬も目が離せませんね。
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